〜ひろこ〜 8

〜ひろこ〜 8
「弘(ヒロシ)さんそのヘルメットちょっと貸しててくれる?」と言って洸(タケシ)は弘が持っていた作業ヘルメットをあごで示した
弘は洸の瞳を見て、何も言わずに工場の中に入って行った
「ちょっと、弘さんて」と洸は呼んだが弘は返事もせず振り向かずに行ってしまった
洸はひろこに言った「家まで送って行くわ、膝痛そうやし」
「いえ、大丈夫ですこれくらい。あれに躓いてしもうて...」と言い振り返って指差した
洸はひろこが指差した方向を見たが、そこには何もなく平坦だった
ひろこは確かに自分は走っていて何か大きなものに躓いたはずなのに、何もない平坦な道を見て不思議に思った
洸は「まぁええわ、とにかく送って行くからちょっと待ってて、ヘルメットとってくる、直ぐ戻るから」と言って工場に戻ろうとしたら
中から弘が自分のバイクヘルメットを持って出てきて洸に渡した
洸は「ナイス!サンキュー」と言って弘のヘルメットをひろこに被せてウィンクした
弘はひろこを抱き上げて洸のバイクの後ろに乗せた
気の強いひろこはいつもなら文句の一つでも弘に投げつけるところだが、よほど膝が痛かったのだろう。素直にバイクに乗った
洸は「よっしゃ!」と言いバイクのグリップを握って「しっかりとつかまっとくんやで」とひろこにいい、「ほんな弘さんちょっと送ってくるわ」と言ってバイクを走らせた

弘は後ろから二人を見守る様に優しい顔で左手を上げた
サイドミラーに映った弘の姿を見て洸も左手を軽く上げて直ぐグリップを握って加速し消えていった
弘は二人が見えなくなると工場に戻って作業を始めた

恭子宅に到着し、ひろこをバイクから降ろして洸が言った「ここがあんたの家か?大きい家やな、美容室もしてるんや」
「ちがう、これは親戚のおばちゃんの家でうちらはこの裏の離れに住まわせてもらってるねん」と言って下を向いた
洸はそれ以上何も聞かずに「そっか、気ぃつけてな」とグローブをとってひろこの肩をポンと軽く叩いた
ひろこは「ありがとうございました、助かりました」と深々と頭をさげた
「あっ、そうやこれ持って帰り」と言ってさっき手当てしてくれたオロナインを手渡そうとしたら
ひろこは「いえ、すみません、ようしてもろて、ありがとうございます、気持ちだけ頂きます」と言ってうけとらなかった
「大丈夫?気つけてな、んじゃ俺いくわ」といいバイクを走らせた
ひろこは頭を下げて直ぐ家に入った

「ヒイコ-、ヒデ-ただいまーちょっと遅なってしもてかんにんなー」

〜つづく〜

2016年4月
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